犬の病気

肥満のお話し

肥満のおはなし

肥満とは?

犬の肥満とは、体内に脂肪がたまり過ぎた状態をいいます。犬において一般的に適正体重を15%以上超えると肥満といわれています。

いつもと違う、なんか様子が変、こういった愛犬の体調の変化に気が付けるのは飼い主さんだけですが、体型の変化には毎日見ているせいか気付きにくいこともあります。
久しぶりにあった友人から「ちょっと太ったかも…」と言われた経験がある飼い主さんも多いのではないでしょうか?
また「おやつを欲しがっているのに与えないのはかわいそう…」という声もよく耳にします。 ちょっと太っている方が愛嬌がある、こうゆう飼い主さんもいますね。

しかし、肥満は注意しないといろいろな病気の原因になります。

最近の調査では動物病院で「やや肥満」「肥満」と指摘された犬は半数を超えるとも言われています。年々、肥満の傾向は増えています。


肥満がもたらす弊害


こんな症状がみられたら要注意

肥満の症状


肥満の原因

①運動不足

過剰摂取したエネルギーを運動で消費できないと余ったエネルギーが脂肪に変換されてしまいます。
太っていることで運動嫌いになり悪循環に陥ります。

②摂取カロリーの過多

おやつなどのフードの食べ過ぎなどによる身体の必要量以上のカロリー摂取は、体内でエネルギーが余ってしまいます。

③不妊手術の影響

避妊や去勢手術によって体内のホルモンバランスが変わり、基礎代謝の低下、食欲の増進が起こり、結果的に肥満につながってしまいます。

④加齢の影響

年齢とともに基礎代謝が落ちてきます。その結果、今までと同じ食事量でも少しずつエネルギーが余ってしまい太りやすくなります。

⑤病気による影響

肥満には単なる食べ過ぎではなく内分泌の疾患から起こるものもあります。


肥満のケアと予防

✔point1 運動量を増やす

関節や心臓病などの基礎疾患がない場合には、運動量を増やしてみましょう。
いつもの散歩に5分~10分プラスすることから始めてみましょう。
いきなり急に増やしても長続きしないし、身体にも負担がかかります。

✔point2 おやつ内容を見直す

肥満ぎみの犬の傾向としては、おやつの食べ過ぎがほとんどです。家族が多い場合には、各人がおやつを与えていると相当な量になってしまうことがあります。
おやつは絶対ダメなものではありません。ダイエット中でもカロリーの少ない物、繊維質の多い物などを選んでうまくおやつを使いましょう。

✔point3 専用の食事

不妊手術などで基礎代謝が落ちている場合や食欲が旺盛な犬の場合には、健康的に痩せる 目的で作られたダイエット用フードを活用しましょう。


肥満のおはなし~もっと詳しく Study!

肥満度チェック

最近はペット用の体脂肪計を使って測定する病院もありますが、一般的には犬の肥満測定には背中や脇腹をなでて骨の存在を確認するボディ・コンデション・スコア(BCS)という指標が広く使われています。
見た目と触った感触で5段階に測定します。 体重は目安にはなりますが、犬種や骨格の違いもあるので一概に体重だけでは太りすぎかどうかは言えません。
理想体重とボディ・コンデション・スコア(BCS)を組み合わせたものがより肥満度を判断しやすいです。  

BCSチェックポイント

①肋骨(あばら)が触れるか

お腹のライン

②横から見たときのお腹のライン

お腹のライン

③ウエストのくびれ

お腹のライン

BCS1BCS2BCS3BCS4BCS5
痩せすぎ痩せている理想的やや肥満肥満
BCS1BCS1BCS1BCS1BCS1
肋骨、腰椎、骨盤が外から容易に見える。触っても脂肪が分からない。腰のくびれと腹部の吊り上がりが顕著。肋骨が容易に触る。上から見て腰のくびれは顕著で、腹部の吊り上がりも明瞭。過剰な脂肪の沈着なしに、肋骨が触れる。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られる。横から見て腹部の吊り上がりが見られる。脂肪の沈着はやや多いが、肋骨は触れる。上から見て腰のくびれは見られるが、顕著ではない。腹部の吊り上がりはやや見られる。厚い脂肪におおわれて肋骨が容易に触れない。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着。腰のくびれはないか、ほとんど見られない。腹部の吊り上がりは見られないか、むしろ垂れ下がっている。
★おすすめの食事

みんなでやってみよう



肥満にならないために

肥満にならないために重要なことは、きちんと管理した「食事」と適度な「運動」、そして定期的な「体重測定」です。
祖先であるオオカミの名残りで、目の前にあるごちそうを食べられるだけ食べる傾向にある犬にとって、肥満体質にしてしまうのも予防するのも飼い主さん次第です。
自分の犬の適正体重をきちんと把握し、運動不足にならないようにしっかりと管理しましょう。

毎日の食事でできること

「肥満のケアと予防」でも述べたように、肥満の予防とケアには専用の食事がおすすめです。
おすすめのフード「レジーム」
①エネルギーとして真っ先に利用される炭水化物を制限し、体脂肪を効率よく消費
②タンパク質をしっかり摂り適度に運動することで、筋肉量を増やし消費カロリーをアップ
③体内の老廃物や過剰な栄養素を排出する高繊維質なフードです。
毎日食べるものなので、おいしくて安心できるフードであることも重要ですね。




皮膚のお話し

皮膚病のおはなし

皮膚病とは?

皮膚病とは、皮膚の基本構造が壊れて、皮膚に発疹などの病的な変化が現れる病気です。
「皮膚病」と言うと、他の病気に比べかるく考えられがちですが、実は動物病院へかかる原因のNo.1といわれていて、しかも治療が長期に渡り、時間も費用もかかるのが現実です。

何らかの原因によって、皮膚のバリア機能が低下してしまうことで発症してしまうのですが、犬の場合、患部を「舐める」「掻く」「噛む」を繰り返すことで、二次感染を引き起こし、なかなか治らない=費用がかかるというのが常です・・・。

皮膚病は、内的要因によるものと外的要因によるものに分けられ、内的要因には先天性と後天性があります。

皮膚病図解


こんな症状がみられたら要注意

皮膚病の症状


皮膚病の予防とケア

「皮膚」は健康のバロメーターであり、身体の内部を映し出す鏡です。 「健康な皮膚」は「肥沃な土壌」、「輝く被毛」は「豊かに育った作物」と言えるでしょう。

皮膚病の原因は多岐にわたるため、そのケアも一筋縄ではいきません。しかし、基本はいつも強い皮膚を維持し、健康的な免疫であること。清潔で快適な生活環境をつくることやストレスをかけないこと、たくさん遊んであげるよう心掛けたり、食事にもこだわりましょう。専用の食事を予防にも治療の一環としても取り入れるのがおすすめです。


皮膚病のおはなし~もっと詳しく Study!

皮膚のはたらき

皮膚は、接触や温度変化、痛みなどの物理的な刺激を感じる<感覚器>としての役割とともに、外界からの様々な刺激や環境の変化から身体を守る<バリア層>としての機能も持っています。

犬の汗腺は人のように全身になく、足の裏に集中しているんだ

皮膚は外側から順に、表皮→真皮→皮下組織の3層構造。
最も外側の表皮は角質層で覆われ、有害な紫外線が直接体内に入ることを防いだり、水分も通さない働きを持っています。また、皮脂膜を張りめぐらして細菌などの侵入を防ぎます。 そして、表皮と真皮を貫くように毛穴や汗腺があり、これらを開いたり閉じたりすることで体温を調節しています。
真皮を構成するコラーゲンは、皮膚組織の70%占める皮膚・被毛の健康維持に最も大切な成分。皮膚組織の土台となり、細胞をつなぎ、血行を促進し、酸素や栄養を送り込み皮膚細胞の増殖を助けます。さらに、紫外線から身を守るためのメラニンもこの真皮で作られます。
皮下組織は、脂肪により衝撃を吸収するクッションの働きや、熱を伝えにくいので体温の調節もします。

皮膚構造図


皮膚病の症状

発疹、脱毛、発赤、乾燥、脂っぽいなど様々ありますが、多くの場合、痒みをともないます。
弱い部分に症状が出やすく、特に目や口のまわりや手足の付け根、先端部に多くみられます。さらに皮膚の延長として外耳にもよく現れます。
痒みは思った以上にストレスとなり、睡眠を障害したり掻きむしってさらに事態を悪化させます。こうしたストレスや、基礎疾患、アレルギーなどは免疫機能を落とし、それにより皮膚のバリア機能が低下すると、様々な部位に症状が広がることがあります。

皮膚病の症状

代表的な皮膚病

皮膚病のうち、最も多い痒みを伴うものに、皮膚感染症とアレルギー性皮膚炎という2大グループがあります。

2大皮膚病グループ

通常、痒みのある原因としては、第1に外部寄生虫感染が多く続いて細菌感染、3番目にはカビによる感染、4番目にアレルギーとなっています。

皮膚感染症
皮膚病原因主な症状
膿皮症ブドウ球菌強い痒みを伴う急性湿性皮膚炎。
最も多いのは外耳炎、指の間も。
アカラス症
(ニキビダニ症)
ニキビダニ皮膚の毛包や脂腺に常在しているダニが異常繁殖。
遺伝的な要素も強い。
マラセチア皮膚炎マラセチア酵母菌激しい痒み、皮脂が大量に出る脂漏症を伴う事が多い。
湿性と乾性がある。外耳炎も多い。
皮膚糸状菌症白癬菌(カビ)円形に脱毛。人にも感染する。件数としては多くない。

アレルギー性
皮膚病原因主な症状
アトピー(吸引)性ハウスダスト・花粉・カビなど
アレルゲンを吸い込む
アレルギーの70%を占める炎症。ひどい痒みを伴う。
主に顔、四肢、腹部に。
ノミアレルギー性ノミの唾液がアレルゲン刺された場所に関係なく下半身全域を中心に症状が現れる。
接触性生活環境の中のアレルゲン10%程度を占める。接触部位の炎症、痒み、湿疹。
食物アレルギー食べ物の中に含まれるアレルゲンで主にタンパク質成分15%程度を占める。痒み、炎症、フケなど皮膚症状に加え、下痢、嘔吐などの消化器症状も。

その他
皮膚病原因主な症状
先天性脂性、フケ症、汗症体質の異常で、全身にわたって起こる。
内分泌性ホルモンの分泌過剰副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンにより脱毛。
腫瘍ガンできものが局所的、全身性に(リンパ種など)。
免疫介在性自己免疫自分自身の身体をアレルゲンとして攻撃する。
精神性何らかのストレス湿疹、皮膚に直接の原因がないのに痒がる。
舐めやすいところだけをしきりに舐めるなど。


皮膚病を悪化させないために

先に述べたように、皮膚病の原因と病態は多岐にわたります。また、好発部位もセオリー通りとはいかず、それら症状からの診断を難しくしています。

しかし多くの場合、治療と並行して専用の食事を与えることが有効であり、上表の場合、食物アレルギーやガン以外では皮膚ケア専用の食事療法がすすめられています。

また意識して、外的・心理的にストレスをかけないような環境をつくってあげること、早く異変に気づき治療や食事などのケアを始めることが大切です。

毎日の食事でできること

健康な皮膚、皮膚のバリア機能を維持するためには、バランスのとれたタンパク質や脂肪酸、皮膚の健康をサポートする成分を補ってあげることが重要です。
特に、食事から摂ったタンパク質は、体内のその他重要な器官から使われるので、十分な量がないと皮膚や被毛にまで行きわたりません。皮膚・被毛を構成する10数種類のアミノ酸を含んだ良質なタンパク質が入った専用の食事を選びましょう。

また、今、皮膚トラブルを抱えていなくても、皮膚・被毛の美しさにこだわる方や、同居犬やお母さん犬に皮膚病がある場合なども専用のフードがおすすめ。
毎日身体の中に取り入れるものだから、影響は絶大。原材料や産地、パッケージなど、安全性にこだわった質の高いフードなら特に安心ですね。




腎臓病のお話し

腎臓病のおはなし

腎臓病とは?

腎臓病とは、その名の通り腎臓の機能が悪くなる病気のこと。犬の死亡原因第3位というデータもある、大変な病気です。
腎臓の基本的な機能をまかなう「ネフロン」は大きな予備能力を持っていて、傷害を受けたネフロンを受けてない部分である程度補うことができます。そのため、症状や血液検査の結果等で飼い主が腎臓機能の低下に気づいた時には、かなり症状が進行している可能性も。高齢になると長年のダメージの積み重ねでさらにリスクが高まると言われています。

腎臓は一度傷害を受けると多くの場合再生しない臓器です。さらに悪いことには、放っておくと徐々にではなく、一気に進行してしまいます。
腎臓機能の75%以上を失うと「腎不全」と呼び、こうなると余分な水分が溜まってむくみが出たり、吐き気や食欲不振、だるさ、高血圧、貧血、また骨が脆くなったり・・・。
腎不全がさらに進行すると、身体の中に老廃物が溜まり尿毒症等の死に至る重篤な状態を引き起こしてしまうこととなります。

腎臓病の現状


こんな症状がみられたら要注意

慢性腎臓病の症状


慢性腎臓病のケア

残念ながら慢性腎臓病では腎機能がある程度まで低下してしまうと、腎臓はもとに戻ることはありません。 慢性腎臓病においては早期発見・早期治療によって、腎臓の機能を低下させないことがとても重要です。
動物病院での薬物治療に加えて、食事療法が必須となります。通常の総合栄養食では機能の低下した腎臓に負担をかけるため、腎臓に負担となるタンパク質・リンを制限し、腎臓機能のサポート成分を加えた専用の食事を与えましょう。

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腎臓病のおはなし~もっと詳しく Study!

腎臓のはたらき

腎臓の仕事は、身体の中の血液に溶け込んだ老廃物や余分な水分を尿として体外に排泄すること。さらに血圧の調節や血液のpHを一定に維持、身体に必要なホルモン等様々な成分を作り出す、といった生きていくために身体の中の環境を一定に保ち続ける(恒常性)とても重要な役割を担っています。
通常左右に一対の腎臓があり、一方がダメージを受けても他方がある程度仕事をまかなってくれるけれど、ひとたび多くの腎臓機能が失われてしまうと、身体中に色々な影響が出るというのもうなづけますね。

腎臓構造図


腎臓病とタンパク質の関係

食べ物は、大きく分けて<糖質・タンパク質・脂質>という3大栄養素に分けられます。このうち、糖質と脂質は身体を動かすエネルギーとして使われた後、息(二酸化炭素)や汗(水)となって体外へ出ていきます。しかしタンパク質だけは、血となり肉となり身体をつくるエネルギーとして使われた後、息や汗以外にも身体にとって有害な“老廃物”となるのに、自然に出ていくことはありません。この老廃物は、腎臓のみが除去し排泄できるのです。

図解-腎臓病とタンパク質

つまり・・・タンパク質が多ければそれだけ老廃物も増え、腎臓がたくさん処理することになるために負荷が掛かります。負荷を掛け続けた結果、不要な老廃物やアンモニア等の毒素がますます蓄積しやすい悪循環に陥ってしまうのです。

例えば・・・腎臓を『ザル』、腎臓に流れ込む血液をお魚やゴミ・土砂の混ざった『川の水』としましょう。ここでは『ゴミや土砂』が老廃物。手に入れたいのはもちろんお魚ですから、『お魚』は身体に必要な栄養成分とします。
腎臓の主な仕事は、「身体の中の血液に溶け込んだ老廃物や余分な水分を尿として体外に排泄すること」でしたね。
つまり、ザルでゴミや土砂をふるい落として捨ててお魚だけを残すこと、となります。腎臓の機能が低下するということは、このザルが傷んで目詰まりした状態。ザルが詰まっているのに、たくさんのゴミや土砂が通り抜けていくと、ザルの網目はますます詰まり、傷んでやがて壊れますよね。ザルは交換できないので、これ以上壊さないように慎重に使わなければなりません。そのためには、当然、ザルを通り抜けるゴミや土砂を減らしてやることです。あらかじめゴミや土砂をできる範囲で取り除いてから傷んだザルを使うのです。

言い換えると、食べ物のうち老廃物を作り出す成分を減らせばいい、ということになりますね。これが「タンパク質を減らしましょう」といわれる所以であり、腎臓病の食事療法の柱です。


慢性腎臓病の症状

腎臓疾患のうち、もっとも一般的な病態が慢性腎臓病です。慢性腎臓病がやっかいな点は、腎臓の機能には余裕があるため、ある程度ダメージを受けていても、ほとんど症状が表に出てこないこと。5年以上にわたってゆっくり進行するケースが多く、限界を超えると一気に進行してしまう怖い病気です。

慢性腎臓病のステージ

腎臓機能の異常をとらえるために、動物病院ではいろいろな検査がありますが、基本的には血液検査によって、腎機能を反映する血中尿素窒素BUNや血清クレアチニンの数値をみます。慢性腎臓病がどの程度進んでいるかは、血清クレアチニン濃度の数値によってステージを分類しています。

ステージ分類血清クレアチニン濃度
(mg/dl)
残存している腎機能病態
11.4未満100-33%尿濃縮能の低下、タンパク尿 臨床症状なし
21.4-2.033-25%軽度の高窒素血症、臨床症状なし~軽度(多飲多尿)
32.1-5.025-10%中程度の高窒素血症、全身性の臨床症状(胃腸障害・貧血など)
45.0以上10%以下重度の高窒素血症、全身性の臨床症状 尿毒症
Iris (International Renal Interest Society)

表の通り、<ステージ1>では、血液検査では異常がみられず、唯一の症状は飲水量、尿量の増加です。一般的には、暑かったから、興奮したからなどと勘違いをして見逃してしまうことがほとんど。しかし、既に尿濃縮能が落ち、尿比重は低下(薄い尿)しています。

<ステージ2>では、血液検査でわずかな異常がみられるようになります。ただ、症状としてはステージ1同様に多飲多尿のみで本人は元気なので、健康診断などで偶然に発見される他はやはり見逃してしまうようです。

<ステージ3>まで進行すると、より深刻な症状が現れてきます。糸球体で血液をろ過できる量が減るため、老廃物が尿として排出されずに体内に溜まり、元気や食欲がなくなったり、下痢や嘔吐、貧血など見られるように。ここではじめて異変に気づき、動物病院へ行ったときには既に進行していた、なんてケースが多いのです。

<ステージ4>は、生命の維持が困難な重症段階です。人のように頻繁に透析することができないため、食欲が落ち嘔吐を続け、著しく痩せてしまいます。老廃物などの排泄ができず尿毒症を発症している状態です。

*腎臓病の食事療法は、ステージ1からのスタートがおすすめです。


腎臓病の分類

原因発生部位による分類

腎前性~腎臓の前に原因があるタイプ

血液循環に異常が起きて、腎臓に送られる血液量が低下することで発生するもの。血液を送り出すポンプの役割をする心臓の疾患が主な原因。熱中症で一時的に心機能が低下して起きることも。
腎臓そのものが機能を失っているわけではなく、適切な処置があれば回復可能なケース。

腎性~腎臓そのものに原因があるタイプ

糸球体腎炎、腎盂腎炎などによって腎臓のネフロン細胞そのものが障害を受けることで起きる。 毒物の摂取や、感染症、寄生虫、外傷、腫瘍、先天的な異常が原因。

腎後性~腎臓の後の尿路(尿管、膀胱、尿道) に原因があるタイプ

尿は作ったものの、スムーズに排泄できないため障害を起こし発症。その先の排泄経路である、膀胱や尿道の結石など尿路結石症が代表的な原因。 
腎臓以外に原因があり、腎臓に異常があるわけではないので、適切な処置により回復の可能性がある。

経過による分類

急性腎臓病

原因が生じてから早くて6時間、遅くても1週間以内に発症し、急激に症状が悪化。一時的に低下した機能は、回復させることができる。腎前性、腎性、腎後性3つの可能性があるが、尿路結石症などの腎後性が最も多い。その他には鉛などの重金属やヒ素、毒キノコ、人間用の薬の誤飲など毒物の摂取などがある。腎臓は腫れて大きくなる。

慢性腎臓病

徐々に進行するので、5年以上経過してからはっきりした症状が現れる場合が多い。腎臓そのものに原因があり、炎症が徐々に広がって慢性的にダメージを受ける。その他にも、歯石に繁殖する細菌が出す毒素が心臓に悪影響を及ぼすと同時に腎炎の原因となる。慢性の場合、一度ダメージを受けて低下したネフロンは、二度と回復しない。腎臓は固く萎縮する。


慢性腎臓病を悪化させないために

繰り返し述べているように、慢性腎臓病ではダメージを受けた腎機能は回復しないため、完治することはありません。 そのため、対処療法による治療をしながら生活の質を下げないように上手に付き合っていく必要があります。治療として、食事療法、薬物治療による貧血改善、脂質代謝管理、糖代謝管理などを総合的に行いますが、その中で、食事療法の果たす役割は極めて大きく重要です。程度の軽いステージ1から専用の食事に切り替えるほど経過は良好といえるため、日頃からワンちゃんをよく観察してなるべく早期に異変に気付くことが大切ですね。

一年に一度、シニアになったら半年に一度、定期的に健康診断を受けよう

毎日の食事でできること

腎臓病は、タンパク質の他、ナトリウム(軽度に)およびリンの含有量を制限する一方で、カリウムやカロリーを補ってあげる必要があります。

一般の総合栄養食ではさらに腎臓機能を悪化させる要因となってしまうため、専用のフードを与えることは腎臓病の治療方法の一つとして有効であり、不可欠でもあるのです。

また、高いQOLを維持しながら腎臓病と向き合い過ごしていくためには、おいしく食べられて長く食べ続けても安全なフードを選びたいですよね。



尿路結石症


尿路結石症のおはなし

尿路結石症とは?

“尿路(にょうろ)”とは、読んで字のごとく腎臓で作られた尿が外へ排泄されるまでの通路のこと。
そして“尿路結石症”は、その尿の通り道に“結石”という石のようなものができてしまう病気を指します。

結石ができると、尿の溜まる膀胱(ぼうこう)を傷つけたり、尿路をふさいで尿を出にくくしてしまいます。
尿は身体にとって不要な老廃物の集まりなので、できた結石が大きかったり量が多いと尿路を完全にふさいでしまい、排出されずに 身体の中に留まって、腎臓にダメージを与えます。 
これがひどくなると腎臓が働かなくなり、「尿毒症」という死に至るような危険な症状になることもあるのです。とても怖い病気ですよね。

さらに犬の場合には、同時に細菌に感染し、膀胱炎や尿道炎を起こしていることが多いため、きちんと治療し完治しないと繰り返しかかってしまうところも要注意ポイントです。

尿路結石症とは


こんな症状がみられたら要注意

尿路結石症の症状


尿路結石症のケアと予防

✔point1 運動

運動により体内で作られた乳酸等が尿pH*1を酸性方向にすることで、アルカリ尿になりにくいといわれています。
また、運動により喉が渇き飲水量が増加します。さらに、罹患率が高いといわれる肥満体を防ぐためにも有効ですね。

✔point2 飲水量アップ

飲水量が増えれば自然と尿量も増加します。そうすることで、尿中のミネラルが飽和状態*2になることや、細菌が繁殖する濃い尿を防ぎます。 さらに、作られた尿をできるだけ早く排出してしまうことも重要です。膀胱に尿を長時間滞留させないよう、トイレの機会を増やしましょう。

✔point3 専用の食事

ワンちゃんの多くは毎日同じフードを食べるため、食事の影響はとても大きいといえます。 飲水の促進や尿pH、ミネラルの調整その他、結石症のケアを目的にした食事がベスト。 一度かかったことがあるわんちゃんは、再発を防ぐためにも継続をおすすめします。

*1尿pHとは・・・酸性~アルカリ性の度合いを示します。pH7を中間に、数字が小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性で1~14で表します。通常、尿は中性から若干酸性よりのpH6~6.5が理想とされています。
*2飽和状態とは・・・それ以上液体の中にミネラルを溶かせない状態。 つまり、ミネラルの量がそれ以上に増えても、尿の量がそれ以下に減っても、溶け切れないミネラルが浮遊する状態になります。 紅茶の中にお砂糖を溶かすのと同じと考えれば、想像しやすいですね。

過飽和


尿路結石症のおはなし~もっと詳しく Study!

尿路結石を知るのに欠かせない「泌尿器系」のはたらきと結石の関係

尿は 腎臓(1) で血液中の老廃物を排出する手段として作られ、そこから尿管(2) → 膀胱(3) → 尿道(4) を通って体外に排泄されます。 これらの器官1~4を総称して「泌尿器系」と呼び、この排泄経路2~4を「尿路」といいます。 

泌尿器構造図

結石は石のできる場所によって名前が付けられ、腎臓に石ができると『腎臓結石』、尿路(尿管・膀胱・尿道)に石ができると『尿路結石』といいます。 なかでも膀胱は、袋状になっており尿を長時間貯められる形状なので、最も結石がつくられやすい場所。 多くの場合、膀胱でできた結石が尿道に流れていきます。
身体の構造上、尿道が狭くて長いオスは、流れてきた結石が詰まりやすくなっています。 一方、メスは尿道が太く短いため、結石は尿と共に排出されやすいのですが、その反面、尿道と肛門が近いため尿路感染症にかかりやすく、 結石がつくられやすい傾向にあります。

  • オスは結石が詰まりやすい
  • メスは結石ができやすい ということです。


結石はどうやってできるの?

結石は何か特別な成分でできているのではなく、普段から尿の中にある成分で作られてしまいます。
結石のできるメカニズムは、様々な因子が関与していて、どれかに特定することは困難です。メカニズム自体も、全部が解明されているわけではありません。

結石はどうやってできるの?

①飲水量の不足

飲水量の不足は、尿の量を減少させ尿を濃くします。
すると、尿の中に溶けているミネラル等の成分が飽和状態になるため、結石の前段階である結晶ができやすくなります。

②尿を排泄する回数が少ない、トイレ回数が少ない

トイレを我慢しがちだったり、お散歩の時だけの排泄が習慣だと、尿が膀胱に長時間滞留します。
尿はどんどん濃縮されて濃くなり、飽和状態を超え、ミネラル成分が溶けずに浮遊してきます。

③尿路への細菌感染

尿道から細菌が侵入し、膀胱炎や尿道炎を起こすと、侵入した細菌の出すウレアーゼという物質により尿はアルカリ化されます。
また、細菌の死骸は結石の芯を形成します。

④偏った食事内容

ミネラルバランスの悪い食事により、ある特定の成分が尿中に異常に多くなることも結石を形成する要因です。

⑤遺伝的な代謝に関連する問題

結石は条件が重なればどんな犬にでも作られる可能性があります。
しかし、ある特定の犬種では、遺伝的に結石を作り易い体質といわれています。


結石にはたくさんの種類がある!

結石は、その構成成分の違いによって分類されており、それぞれ対策・治療法が異なります。 発生率は、『ストラバイト結石』と『シュウ酸カルシウム結石』が半々であわせて全体の90%を占めます。
以前は、ストラバイト結石が多かったのですが、近年ではシュウ酸カルシウム結石が増加し、米国ではシュウ酸カルシウム結石が追い越したとも言われています。

ストラバイト結石

ストラバイト結石

  • 細菌感染により膀胱炎を発症し、尿pHがアルカリ化することが主な原因
  • リン、マグネシウム、アンモニウムで構成されるため「リン酸アンモニウムマグネシウム結石」ともよばれる

ストラバイト結石の多くは、大腸菌などの細菌が尿道から侵入し、増殖することで膀胱炎や尿路などの感染症を引き起こすことに起因します。細菌によって尿がアルカリ性になり、弱酸性の正常な尿では溶解していた「リン酸アンモニウムマグネシウム が、アルカリ性では溶解できずに結晶となり、それぞれがくっついてやがて結石になります。
通常は、細菌が尿路から侵入しても自己免疫で細菌を死滅させますが、ストレスや体調不良、高年齢など免疫機能の低下があると細菌が増殖しやすくなります。
また、まれに細菌感染がなくストラバイト結石が出来る犬もいます。 飲水量が少ないと尿量も少ないため尿意が感じられず、尿が膀胱に長時間滞留し、徐々に濃縮されていきます。濃い尿中では、リンやマグネシウムが飽和状態になり、結石を形成する要因となることがあります。 予防として、細菌を外部から侵入させないよう、生活環境や身体を清潔に保つことが必要です。

シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸カルシウム結石

  • 尿pHの酸性化が原因(細菌感染が原因ではない)
  • シュウ酸、カルシウムで構成される
  • シニア犬に多い
  • ストラバイト結石治療による弊害ともいわれる

シュウ酸カルシウム結石は、シュウ酸が体内に吸収され、尿が作られる時にカルシウムと結合して結石になります。主に腎臓で作られるので、飲水量が少なく尿量が減少すると、腎臓がシュウ酸やカルシウムで飽和状態になってしまい、結石ができやすくなります。
また、ストラバイト結石症になったことにより、アルカリ尿を改善しようと、反対に酸性尿になり過ぎ、今度はシュウ酸カルシウム結石ができるというケースも多く見られます。
昔は、シュウ酸の多い食物を食べない、カルシウムを減らすなどと言われていた時期もありましたが、犬の場合はほうれん草や小松菜以外にシュウ酸が多い食物を多量に摂取する機会がなく、食事によるシュウ酸の摂取と結石の関連性は少ないと言われています。
予防には、シュウ酸が腸で吸収されて血液中に入る前に、腸内でカルシウムと結合させ便として排泄させること、消化が良くミネラルバランスの良い食事をとることが必要です。

その他

  • 尿酸アンモニウム結石
  • シスチン結石
  • ケイ酸結石(シリカ結石)
  • リン酸カルシウム結石

どの結石も水をたくさん飲んで、尿が飽和状態に
ならないようにすることが大切だよ


結石ができないようにするために

尿はそもそも老廃物を排出するためのものなので、尿中にはそうした老廃物が常に含まれています。つまり、特定のミネラル成分が結晶化しても結石になる前に流してしまえば、深刻な問題にはならないと言えます。結石ができないようにするためには、尿を濃くしないということが大切なポイントです。
また、尿pHは一日のうち、ある程度高くなったり低くなったりと変動するため、結石症の問題は、尿がずっとアルカリ性または酸性になることです。
ストラバイト結石の場合、尿pH6.5以下では溶解するため、アルカリで結晶になったり酸性で消失したりを繰り返しているのが正常です。この場合、一度にたくさんの食事を摂ると食後の尿pHがアルカリ化しやすいため、食事を一日なるべく複数回に分けて与える方がベターです。

毎日の食事でできること

「尿路結石症のケアと予防」でも述べたように、尿路結石症の予防とケアには専用の食事がおすすめです。
結石症の初期段階や予防として、≪尿量・尿pH・健康な尿路・老廃物のケア・ミネラルバランス≫に配慮していることはもちろんのこと、毎日食べるものなので、おいしくて安心できるフードであることが重要ですね。



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